BANANA FISH(アニメ)8話と9話の解説&考察!ショーターが狙われた理由

BANANA FISH ショーター 天使の像 BANANA FISH
(C)吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH
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みなさまこんにちは。

中々毎週記事が更新できずに、大変申し訳ございません。

アニメ版BANANAバナナ FISHフィッシュ担当いたしております、社畜ライターnk(エヌケー)です。

来世はぜひともはたらく細胞に生まれ変わり、繁忙期とは無縁の生活をしたいものです。

さて、BANANA FISH 9話放送から何日も経ちますが、未だにショーターショックから抜け出せません。

7話はマックスの元嫁・ジェシカと息子のマイケルが何者かに襲われそうになったところで幕を閉じましたね。

BANANA FISH(アニメ)6話と7話の解説&考察!伊部のアマデウス症候群
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そこから非常に重いストーリーが展開された8話、9話。

声優さん抜きにしてもショーターが好きだったので、知っていても衝撃が大きかったです。

未だに画像を見るだけで涙が出ますし、記事を書くのもしんどいですが、せめてものはなむけ?になぜショーターが被験者となってしまったのか、様々な角度から考えてみたいと思います。

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Fly boy, in the skyから得られた考察

本題に入る前に、前回の伊部のアマデウス症候群に関する記事が個人的に不完全燃焼でしたので、買っちゃいました、「文庫版・BANANA FISH ANOTHER STORY」

よかったという言葉では足りないくらい、珠玉の一冊でした。

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小学館
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『BANANA FISH』のラストを飾る名作『光の庭』、ショーターとアッシュの少年刑務所の日々『ANGEL EYES』、ブランカとアッシュが初めて出会う『PRIVATE OPINION』、棒高飛び選手・英二が空に舞う一瞬『Fly boy,in the sky』など、奇跡のような生を駆け抜けたアッシュ・リンクスがよみがえる珠玉の5ストーリー。

その中で最後に収録された「Fly boy, in the sky」は伊部と英二の出会いを描いたもの。

伊部のアマデウス症候群についてはもちろん、そのほかにもこれまでのストーリーの裏付けになる部分もありましたので、紹介していきたいと思います。

続・伊部がなりたかった「英二」

伊部はテレビ中継されていたインターハイで偶然英二が競技をしている姿を目にします。

ちょうどコンテスト用の被写体を探していたということもあり、その後すぐに島根に向かい、英二の写真を撮り始めました。

はじめはカメラに緊張していた英二が初めて本気で飛んだ姿を見て、伊部は「長島(おそらくモデルは長嶋茂雄氏)の逆転サヨナラホームラン」を思い出します。

BANANA FISH 英二
出典:BANANA FISH/8月10日放送/フジテレビ

長嶋氏は現役時代、おう貞治さだはるとともに巨人のV9を支えた名選手です。

プロ野球の隆盛時代の幕開けと言われた天覧試合(昭和天皇が観戦された試合)では、9回裏にサヨナラホームランを打ち巨人を勝利に導きました。

長嶋という選手はここぞというときの勝負強さから、当時の子どもにとっては憧れてやまないスターだったのです。
(アニメ版は現代に時代改変されていますので、長島ではなく松居(松井)のサヨナラホームラン変わっているかもしれませんね)

伊部の中で英二の棒高跳びは、憧れのスターのドラマティックな一打と同等だったのです。

こうした描写から察するに、伊部の英二への感情は子ども時代の夢のような、わくわくした気持ちを伴うものなのかもしれません。

英二のようになれない自分にガッカリしたりすることはあっても、サリエリのような激しい憎しみまでは抱いていなかったのではないでしょうか。

英二が車を発進させた理由

BANANA FISH 英二
出典:BANANA FISH/8月3日放送/フジテレビ

5話でチャーリーや伊部に車から引きずり降ろされそうになっているアッシュを助けるために、車を発進させた英二。

なぜ英二がこのような突飛な行動に出たのか、実はあまり納得できていませんでした。

もちろん、自分のせいでグリフが命を落としてしまった負い目や、それに対して決着をつけたい気持ちがあったのだと思いますが、それは兄貴分の伊部を裏切るような形になってでもすることだったのか、疑問に思っていました。

英二がアッシュを助けた背景には、島根から東京に帰る際の伊部の言葉があったように思います。

伊部「いつか必ず もっと真剣に自分以外のことを考えなきゃならない時がきっと来る…
それまでは自分の気持ちになるべくさからわないようにしたいんだ」

文庫版「BANANA FISH ANOTHER STORY」収録 「Fly boy, in the sky」より

高校時代の英二は家族のことや、競技における素質や成績など、純粋に「好きだ」という気持ち以外のことを考えて今後棒高跳びを続けるか否かを悩んでいました。

この後に続く「きみをとりたかったんだ」という言葉に励まされて、最終的に英二は続ける決意をします。

別れ際のひと時は、英二にとってとても大きなものだったのだと思います。

2話の「俺たちが見届けてやろう、最後まで」という伊部の言葉や、「グリフのことについて決着をつけたい」「アッシュを助けたい」という自分の気持ちに従った結果、車を発進させるという決断に至ったのかもしれません。

つまり、伊部のことを大切にしていたからこそあの行動にでたのではないかと今は考えています。

アッシュとショーターの関係

ショーターが狙われた理由は「アッシュととても親しい」というのが大きいと思います。

中々他人に心を開かないアッシュの唯一の友人といても過言ではないショーター。

9話の予告でアッシュは「あいつは最初からおれを心がある人間として接してくれた」と、彼について話しています。
(予告ですでに大泣きしました)

この言葉の意味を教えてくれるのが、「Fly boy,~」同様「BANANA FISH ANOTHER STORY」に掲載されている「ANGEL EYES」です。
(このストーリーはBlu-ray/DVDの特典ドラマCDに収録されるとのこと。ぜひ買いたいです!)

「ANGEL EYES」は15歳のアッシュと、ショーターの出会いを描いた作品。

物語の終盤、ショーターはアッシュに次のように言い放ちます。

ショーター「人の気持ちをもてあそぶな!!人の気持ちをあやつろうとするな!そんなことをすれば――おまえは本当の悪魔になってしまう!!」

文庫版「BANANA FISH ANOTHER STORY」収録 「ANGEL EYES」より

ショーターはアッシュを心ある人間として、良心を失い、人間性を手放してはだめだと叱責します。

誰もがアッシュを道具のように扱う世界の中で、心から叱ってくれる人はほとんどいませんでした。

英二に対してもそうですが、アッシュは自分を人間として扱ってくれる人に対して気を許して、様々な表情を見せてくれます。

ショーターに叱られたのちに、「おせっかいハゲ」という、普段のアッシュからは想像できないような言葉が飛び出した時点でかなり心を開いていたといえるかもしれません。

この後2年という時を経て、2人は信頼しあえる友人になっていったのです。

ショーターが正気を取り戻した理由

BANANA FISH ショーター 天使の像
出典:BANANA FISH/8月31日放送/フジテレビ

アニメで非常に印象的だった、バナナフィッシュを投与されたショーターが正気を取り戻すシーン。

「ANGEL EYES」を読んだファンにとっては「なんて憎い演出をしてくれるんだ!!」と叫びたくなる素晴らしいものだったと思います。

原作を読まれていない方への補足となりますが、あのシーンで天使の像を見てショーターが我に返った理由をお話したいと思います。

少年刑務所で初めて会ったアッシュにショーターは既視感を覚えます。

しかしアッシュに聞いても会ったことはないと言われるのみ。

ずっと思い出せずにいましたが、ふとしたきっかけで当時のアッシュが「昔姉からもらったクリスマスカードに描かれていた天使」にそっくりだと気づきます。

つまりショーターにとって天使=アッシュだったのです。

ちなみにディノのルーツでもあるコルシカ島はフランス領ではありますが、元々イタリアのものでした。

ローマが近いこともあり、キリスト教文化が強い場所ですので、ディノの家に天使の像があっても不思議ではないと思われます。
(ただ、処刑室の装飾としてはいかがなものかと…)

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李家の力と裏切り

ショーターが被検体として選ばれてしまったのは、アッシュと親しかったことに加えて、チャイナタウン(李家)が彼を手放したからというのもあるでしょう。

李家とはどんな一族なのか、そして彼らがなぜショーターを切ったのか、歴史的な背景や中国人の国民性から考察してみたいと思います。

李家が力を持った背景

ストーリー中から、李家はチャイナタウンにおいて歴史のある権力者であることがうかがえます。

李家はいつ頃アメリカに入ってきて、なぜチャイニーズ社会で信頼をえることができたのでしょうか。

アメリカにおけるチャイナタウンの歴史から推測していきたいと思います。

アメリカに本格的に中国系移民がはいってきたのは1860年以降、清朝が自国民の海外渡航を認めてからだといわれています。

はじめはニューヨークではなく、サンフランシスコやカルフォルニアで労働者として多くの中国系移民が働いていました。

大陸横断鉄道開通後は新たな職を求めた移民たちがニューヨークに流れたともいわれています。

そうした中で、1870年以降アメリカで中国人排斥運動が起こります。

不遇の時代を迎えて、彼らは一か所に集まりコミュニティを形成し、チャイナタウンと称しました。

この頃中国人互助会や裏組織など、表でも裏でもチャイニーズ同士のもめ事を解決する組織も発達し、厳しい差別にさらされながらも結束力を固めていきます。

香港をルーツとするマフィアの中にはこの初期の移民に紛れてアメリカに渡った者もいるようですので、もしかしたら李家は100年以上前からアメリカのチャイニーズ社会に潜んでいたのかもしれません。

また、この頃のチャイナタウンはチャイニーズたちを守る場所としての意味合いが強かったようですので、李家は表から裏からチャイナタウンを仕切っていたために代々チャイニーズたちから感謝されているという可能性も否定できません。

BANANA FISH 王龍
出典:BANANA FISH/8月3日放送/フジテレビ

1965年に移民法が緩まると、毎年多くの中国系移民がアメリカに流入してきます。

チャイナタウンの近くにはイタリア人移民街などもあり、中国系でないグループへ対抗するために裏組織の力が強くなっていったそうです。

おそらく李家はこの頃もチャイナタウンを守ってきたために、ショーターの父母世代から絶大な信頼を得たのだと思われます。

また、少し話はそれますが、元々彼らの中にある中華思想(漢民族が世界の中心と考える、やや排外的な思想)や、アメリカ大陸に渡ってきてから受けた人種差別などからチャイナタウンの結束は固く、同胞よりも西洋人を優先するのは許さない風潮があったのかもしれません。

チャイニーズたちがたどってきた歴史は、李家の地位を絶対的なものにしたのと同時に、ショーターを苦しめる一因になったのだと考えます。

李家はなぜショーターを売ったのか

9話で新しく登場したシンは「ショーターは放逐された」と言っています。

彼は慎重な男ですから、ショーターが追放されたと聞いてすぐに行動することはないでしょう。

だとすると李家はかなり早い段階からショーターを裏切っていたのではないかと推測されます。

李家がチャイニーズたちを守ってきたのだとして、彼らはなぜ同胞であるショーターをディノに売ったのでしょうか。

これについては、中国の歩んできた歴史と、それに基づく国民性が由来しているのではないかと考えています。

中国人の行動文法では、裏切ることで得をする機会を得たときに、それを躊躇なく実行することを道徳的な悪とは考えない。こうした道徳観はいまの日本ではとうてい受け入れられないが、戦国時代の下克上ではこれが常識だった(だからこそ忠義を尽くすことが最高の徳となった)。

引用:デイリー新潮 「中国人はなぜ裏切るのか―― 裏切られることを前提とする社会」

中国は日本と異なり、王朝やトップにたつ民族が目まぐるしく変わってきた歴史があります。

そうした中で信じられるものは自分だけだと言っても過言ではなかったのです。

また、自分と同じように信用できる人(家族や親友)とのつながりを何より大切にする一方、それ以外の人には少し冷たく見えるような態度もとります。

もちろんビジネスシーンなどではおおらかに接することもありますが、それでも裏切られる可能性があるのが前提の関係だと彼らは考えているのです。

さて、李家にとってショーターは内側の人間だったのかというと、必ずしもそうではなかったのだと思われます。

チャイニーズにとって内側の人間とは血縁のあるもの、もしくはごく親しい友人のみだと言われています。

また、彼らは真に大切に思う人には明け透けにものをいう傾向もあります。

王龍ワンルンはショーターに本心を隠していましたし、月龍ユエルンも決定的な証拠を見られるまで、自分が李家の者だと明かしませんでした。

BANANA FISH 月龍 李家の証
出典:BANANA FISH/8月17日放送/フジテレビ

こういった場面を見る限りでは、李家にとってショーターは外側の人間だったことがうかがえます。

そして彼を売り、アッシュをディノのものにするために利用することで李家、あるいはチャイナタウンは多くの利益が得られるのは6話の王龍とディノの会談から推測されます。

月龍が毒入りのエサであるとするならば、ショーターは毒の入っていないエサとして献上されたのでしょう。

バナナフィッシュを投与された後に起きていた変化

ここからは今まであまり取り扱ってこなかったバナナフィッシュそのものについて考えていきたいと思います。

エイブリーは被験者の脳が手に入ったことを大層喜んでいましたので、今回はショーターの脳にどんな変化が起きていたのか予測していきます。

(ショーターに起きたことをすべて解き明かさなければならないほどショックを受けたので書かせていただきます。
脳科学について下調べもある程度しましたが、この分野に関しては素人ですので、信ぴょう性は薄いということを予めご了承ください。)

まず、バナナフィッシュという薬を投与された個体には以下のような特徴が現れます。

1.攻撃性が高くなり、破壊的行動をとる
2.被暗示性が高くなる
3.恐怖や憎悪の感情が増幅する
4.自己を破壊するまで、フラッシュバックに苛まれる 

これらの特徴から脳の中でもとくに視床下部ししょうかぶ扁桃体へんとうたいに大きな影響を及ぼすのではないかと考えています。
(このトピックスを取り扱うにあたり、脳科学辞典「攻撃性」をかなり参考にさせていただきました。)

視床下部とは

いくつかの実験の中で攻撃行動の発現には視床下部が必要であることが明らかになっています。

視床下部の働きについてざっくり言いますと、食欲など生きていくために必要な欲求を大脳に伝えて行動化させる働きを担っています。

身の危険を感じると交感神経を刺激し、「逃げろ!」あるいは「攻撃しろ!」という指令を下している部分でもあります。

バナナフィッシュが身体に及ぼす影響としてあげられている血圧・脈拍の上昇や瞳孔の散大も交感神経が作用している際の特徴ですので、少なからず視床下部に影響をもたらしていると考えられるでしょう。

扁桃体とは

扁桃体は情動を司ると言われる部位で、とくに不安や恐怖、怒りなどネガティブな感情に関わっています。

扁桃体は海馬(記憶を司る部位)の近くにあり、強烈な情動とそれに関する記憶の断片が結びついて保存されると考えられています。

扁桃体が「こいつは危険だぞ!」と感じると、それが何か理解する前に視床下部に危機を知らせこの難局をのりきろうとします。

例えばヘビと恐怖の感情が扁桃体にインプットされていた場合、ヘビらしきものを視界にとらえただけで飛び上がって逃げ、対象を自分から遠ざける、あるいは所持していた武器でそれを攻撃し、対象を排除するという行動に出るわけです。

こうしたとっさの行動に出た後で実はヘビではなく木葉でした、ということもしばしばあります。

生きるためには恐怖や不安の対象から逃げ遅れるよりマシ、というのが扁桃体の存在する理由でもありますから、こうした突発的で不正確な判断はよくあることのようです。

つまり、バナナフィッシュを投与されたショーターは、扁桃体が刺激され、恐怖と英二が強烈に結びついてしまい、その結果英二を見ただけで扁桃体が視床下部を刺激、攻撃行動に移ったのだと考えています。

BANANA FISH ショーター
出典:BANANA FISH/8月31日放送/フジテレビ

この扁桃体という部位はPTSD(心的外傷後ストレス障害)との関連も指摘されています。

例えば大地震の被災者が、少し床が揺れるだけで恐怖の感情がよみがえってしまうのも、扁桃体の働きだと言われています。

バナナフィッシュについては、PTSDのような後遺症を脳に残し、あたかも薬の効果が持続しているように見せかけている部分もあるのではないかと考えています。
(これだけではグリフが廃人になってしまった理由を説明しきれていませんが、少なくとも10年間フラッシュバックに悩まされた一因としては説明がつくかと思います。)

また、脳科学辞典に低グルココルチコイド状態にすることで低覚醒状態であるのに高い攻撃行動を示す、というバナナフィッシュと関連の強そうな記載もありましたが、これについては私の理解がまだ追いついていないので、今後の課題とさせていただければと思います。

BANANA FISH(アニメ)8話と9話の感想

ごあいさつの場面でも申し上げましたように、とにかくショーターを失ったことへの絶望が深いです。

アッシュにとっても心の傷以外の何物でもないのですが、視聴者にとってもロスにはいってからここまでの展開はかなり苦しいものだったのではないでしょうか。

ショーター役の古川慎さんはアフターレコーディングコメントにて、「ショーターのことも偶に思い出してください」と言っていますが、偶にどころか毎週思い出すよ!!と声を大にして言いたいくらい、大好きなキャラクターです。

スキップ、グリフ、ショーターと次々に大切な人を失ったアッシュに、今後英二がどのように寄り添うのか、そしてそれをどのような形で表現してくれるのか、今後のアニメも楽しみにしています。

また、今回の記事で大活躍した「BANANA FISH ANOTHER STORY」についての感想もちらりと述べさせていただきます。

BANANA FISHの世界をより深く楽しめる一冊でしたし、アニメでは説明しきれない部分を補ってくれる面もあるな、と感じました。

キャラクターの過去や未来がつまった一冊ですので、BANANA FISHを完走したのちにはぜひ読んでほしいと思える短編集でした。

控えめに言って最高です。

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