ブラックに始まり、ブラックに終わる『アフリカのサラリーマン』最終回12話。
一つだけ言える真理がある。
来週からは、アフサラがない。
柴犬侍です。
ボーナスでBBQしたりシースー行ったり楽しげだった前回11話から一転、クビのかかった地獄のプレゼン対決をさせられるライオンたち。
お相手は、前回のラストにちょろっと登場した競合他社のトラとヒョウ。
アフリカにトラはいないってのはナイショダヨ。
ハンカチ必須の感動のアフサラ最終回は、初心に返ってブラックでリーマンな一面を見せて終わったので、動物要素もパロディ要素も少なめという異例の事態。
とはいえ、ライオンとトラたちのプレゼンは一種の縄張り争い……
彼らの行動を、実際の動物に当てはめたらどうなるだろう?
そのへんを切り口に、最後は動物界のストレスというテーマで一つ書くことにしました。
そして、脱線と与太話のみで構成されてきた本記事シリーズも今回でラスト。
アフサラ最終回ともども、お付き合いいただければ幸いです。
動物界のストレス
勝手に○ッチンプリンを食べられたことを10年以上も根に持ち、プレゼンで恥をかかせるという社会動物らしい手段で恨みを晴らそうとしたトラとヒョウ。
アフサラ12話における彼らの行動は、会社同士ということを踏まえると縄張り争いの一環と思えなくもない。
が、彼らの行動を動物的にいうなら、餌不足によるストレスから起きた攻撃行動といった方が正しそうだ。
一見動物らしからぬこの執念深さ、実際の動物には見られるのか?
最後のテーマはこれです。それではまいりましょう。
「脅威」を感じる動物たち
トラがライオンに対して行なったことは、単なる「嫌がらせ」である。
生存競争とは関係なさそうで、何のために行なっているのかもよくわからない。
「恐怖」ならわかる。
脅威を感じて、それをどうにかしようっていうのは生きるための当然の反応だからである。
これについては、10話記事の「病院嫌いの動物」でも書いた通り。
出典:アフリカのサラリーマン/12月23日放送/TOKYO MX
恐怖を感じて、それを排除しようとする動物の行動の例を見ていこう。
一つはカラスである。
アフサラ3話の記事内でも書いたように、カラスは自分たちの縄張りで嫌がらせを行なった人間のことをずっと忘れず、その人間が近づくと大きな声を鳴らし立てる。
これは危険と判断したものに対して、仲間に警戒を呼びかけるための正常な行動だ。嫌がらせではない。
一方、チンパンジーは同じ群れの子供を殺すことがあることが知られている。
謎めいた行動だが、他の群れからやってきたメスの子が狙われやすいことから、これは自分たちの子かどうか疑わしい個体を間引きし、改めてメスの発情を促すという繁殖戦略の一環なのだそうだ。
他にも、イヌがぬいぐるみを攻撃することがあるという事例も確認されている。
これは、自分そっくりのぬいぐるみを可愛がる飼い主を見て嫉妬し、自分より優位と思われるぬいぐるみを排除しようとして起こるそうだ。
このように、一見異常に見える行動も生存や繁殖という面から見れば理解できるものばかり。
では、次の例はどうだろうか?
「いじめ」を行なう動物たち
動物界とは不思議なもので。
特定の個体に対し、執拗かつ不可解な攻撃行動をとる動物がいる。
有名なのはまずイルカだろうか。
イルカは赤ちゃんを見つけるとその場で殺し、亡骸を意味もなく海岸に叩きつけたりすることがあり、他にも集団で他のイルカや魚をクチバシや歯で攻撃して死に追いやっては、食べることもなく立ち去っていくなどの行動が指摘されている。
イルカ以外だとニワトリも有名だ。
ニワトリは、同じ小屋の仲間のお尻を集団でつつき回すという不可解な行動をとることがあり、養鶏家の間で度々問題となる。
つつかれた個体は傷ついて血を流し、ひどいときには死んでしまうというのだ。
こうした行動の原因は不明だが、一説には赤いものをつつきたくなる習性に由来しているという。
一番多いのは産卵直後の個体がいる時のようで、産卵直後の血のついたお尻を見た他のニワトリが、一斉にそこへ攻撃を始めることで起きるというのだ。
まるで人間社会における「いじめ」のようだ。
不可解で、非論理的な行動に見える。
不可解といえば、10話のツルの解説で書いた鶴の舞もそう。
ツルは人知れず一羽でダンスのような行動(鶴の舞)をすることがあり、それは他のツルとのコミュニケーションでもないし、謎に満ちている。
こうした行動は、あちこちで起きる「いじめ」の原因がどこにあるのかはっきりわからないのと同じで、いまだ研究途上にある動物たちの奥ゆかしいところである。
原因は強いストレス?
さっき話したニワトリの「つつき」の原因には、餌不足等によるストレスも充分に考えられるのだそうだ。
動物も強いストレスを感じると不安を覚え、ついには攻撃行動に発展しうるというのは10話記事で書いた通り。
出典:アフリカのサラリーマン/12月23日放送/TOKYO MX
人間の場合、ストレスを感じると
食べたり遊んだりし、つらいことを一旦忘れることで精神状態を回復させるのだが、中には暴言や暴力に走ったり、過食や拒食、依存症や幼児退行といった過剰な反応に及ぶ人もいる。
動物たちの不可解な行動を人間でいう防衛機制の一種と考えるなら、イルカやニワトリはそれが直接的な攻撃行動として表れたケースといえなくもない。
ツルの例はたまたま攻撃行動にならなかっただけで、すべての動物が何かしらそういったストレス発散のための習性を持っている可能性がある。
なので、攻撃行動を行なう動物がいるからといって、それを悪と決めつけてかかるのはよくない。
カラスにしたって、カアカアと鳴らし立てるのは自分たちに敵意を向けるものへの警戒行動であり、餌をくれたりする親切な人にはプレゼントを贈るなど、礼儀をわきまえているかのような可愛い一面もある。
もしかしたらそれは、その動物が発するSOSであったり、適切に対処すれば防げるものかもしれないのだ。
動物に限らず、われわれ人間社会においてもそれは同じ。
子供やペットのいる人はそうした兆候を注意深く見守ってあげることが大切だし、見守る側もストレスを抱えすぎないように身体をいたわらなければならない。
大事なのは、ストレスとどう付き合っていくかなのである。
パロディの元ネタ
最終回となる12話のパロディはさぞかし多いだろう――
と身構えてたらそうでもなかった。
アフサラのくせに真面目にサラリーマンやってたからです。アフサラのくせに。
ただ、前回から続く話の根幹がプッ○ンプリンを勝手に食べられたせいだったり、プレゼンを成功させたライオンたちを祝った店が○民だったりと、重要なところはしっかりパロネタで固めているあたり抜かりない。
それがアフサラのアフサラたる
「会いとうて会いとうて震えそうになってたで」
Aパートで、ライオンと再会したトラが出会い頭に言い放ったセリフ。
元ネタは、歌手・西野カナが2010年にリリースした楽曲『会いたくて会いたくて』。
この曲に限らず、西野カナの楽曲は歌詞中に「会いたい」系のフレーズが頻繁に出てくることで知られ、中でも西野カナの名を一躍有名にし、なおかつ「会いたい」系のフレーズが11回も登場するこの曲の知名度は高い。
ヌーバーイーツ
残業中のライオンたちのもとへピザを配達してきた業者。
元ネタは、オンラインフードデリバリーサービスの「Uber Eats(ウーバーイーツ)」。
アプリを使って、対応している店に出前を頼める。
「ニトロ○○とかやんないんすか!?」
寝坊してしまい、プレゼン会場へと急ぐ中でオオハシがタクシーの運転手に向かって叫んだセリフ。
ニトロの次の部分が聞き取れなかったが、車でニトロといったら1つしかない。
オオハシが言っているのは、エンジン内にナイトラス・オキサイドというガスを噴射して大幅に加速する「ナイトラス・オキサイド・システム」のこと。
「ニトロ」とも呼ばれ、『ワイルド・スピード』をはじめ、カーアクション映画やアニメ・漫画等のフィクションで頻出する。
日本では普及していないが、アメリカではメジャーなチューニングらしい。
アフアフプリン
ライオンとトラ・ヒョウの因縁の原因。
これをライオンが勝手に食べたことで10年以上恨み続け、今回の事態につながった。
出典:アフリカのサラリーマン/12月23日放送/TOKYO MX
元ネタは、江崎グリコが展開しているプリンブランド「プッチンプリン」。
「Mega」とあるので、160gの「Big」サイズの方だろう。おいしい。
大衆酒場「牙夢民」
プレゼンに成功したライオンたちを労うために、アフリカ商事一同が集まった店。
出典:アフリカのサラリーマン/12月23日放送/TOKYO MX
元ネタは、ワタミが展開している外食産業の業態の1つ、居食屋「
2012-13年と2年連続でブラック企業大賞を受賞するなどブラック企業の代名詞のような会社だったが、近年は業績が回復しつつあり、労組の結成や待遇改善など「ホワイト化」の影響が出始めているようだ。
なお、「牙夢」とは本作アフサラの原作者・ガムに由来する。
アフリカのサラリーマン12話(最終回)の感想
あんなに悪そうだったのに、ラーテルと違って妨害の1つもせずに真っ向勝負を挑んできたトラとヒョウに癒やされる最終回。
最後はサラリーマンで〆てきましたね。
この頃は思い出したように動物っぽいシーンが増えていたので、原点回帰って感じでしょうか。
肝心のプレゼン内容は不明だったものの、下手にシリアル要素を含めるでもなく、ひとしきり戦った後は肩を組んで笑い合うみたいな爽やかな終わり方は、アフサラらしくてよかったな~
アフサラらしいといえば、最終回はパロディ控え目(当社比)でした。
アフサラ=パロディと考えている人がどれだけいるかは知りませんけど、ここまでやりたい放題してきたのでちょっと意外でした。
まあ、筆者が見逃してるだけの可能性もなきにしもあらずなんですが。
個人的には、消息不明だったカラカルとムベンベの生存を確認できたことが収穫です。
祝いの席ではちゃっかり殺ハムもいたりしてこれもう社員だろってツッコみたくもなりましたが、その隣のカワウソが気になってそれどころじゃありませんでした。
誰……?と思ったら、フクロウと一緒に5話のコスト削減会議に出てた役員のうちの1匹。
まだヒツジのほうが目立ってたろうに、なにゆえカワウソ……謎。
出典:アフリカのサラリーマン/12月23日放送/TOKYO MX
最終回なので総括的なことも言っちゃいますが、アフサラに関しては割とネガティブなこともいとわない挑戦的なところが好きでした。
やりすぎるとアレですが、多少毒のあるくらいがギャグアニメにはちょうどいいと思ってます。
最終回に際して、Twitterで監督の畳谷哲也さんが各話の裏話を語っていますが、10話のツルのセリフが全部アドリブだったり、8話の溶けるオオハシの溶け方を実際に色々試してみたりと現場もチャレンジ精神旺盛だったようで、さもありなん。
メロン熊やらの出てきた4話は多分一番笑ったし、展開の勢いとかも相まってとても印象深い。これがアニオリというから可能性を感じますね。
まだまだ発展途上の3Dアニメということも含め、他に類を見ないユニークな作品に仕上がったんじゃないでしょうか。
いい作品だと思いますよ。ギャグアニメは色々見てきましたが、下から5番目くらいに好きです。
そんな本編に対し、動物とパロディ解説をメインにするというズレた趣向がチャームポイントだった本記事シリーズも今回で最終回。
つたない文章と付け焼き刃の知識であれこれ語りつつ、パロディの嵐に振り回されるなど割と波乱万丈だった1クール。
記事を読んで、少しでもアフサラと動物たちの魅力を感じていただけたなら嬉しいです。
以上、柴犬侍でした。御免。
コメント